こんにちは、ご覧いただいてありがとうございます。
私は国内大手生命保険会社に10年以上勤務した経験を持つ管理人です。
新人の教育やマネジメント職も経験したうえで、退職を決意したのですが、現在全く後悔することなく生活しています。
このブログでは、保険会社に勤めているが退職や転職したいと思っている方、保険会社への転職を迷っている方、保険会社に勤めているがこのままでいいのか不安に思っている方に向けて、有益な情報を配信しています。
今日は、10年以上保険を売り続けた私の保険がまともに役に立ったためしがなかったという、ウソみたいな本当の話をします。
このブログの記事は、あくまでも一人の生命保険業界にいた人間が感じた事であり、すべての方に退職をすすめているわけではありませんのでご了承いただいたうえ、最終的な退職は自己責任にてお願いします。
目次
生命保険が本当に役に立つ時とは?
私が10年間も国内大手生命保険会社に勤めて販売した新規の保険契約は約300件近くあります。
この中には、個人年金などの貯蓄型もあります。
ただ、いわゆる生命保険の販売数のほうが圧倒的に多かったです。
生命保険が本当に役に立つ時というのはどういう時でしょう?
私が売っていた保険は、死亡時に遺族に支払われる死亡保険金がベースに設定されています。
そこにプラスして、要介護状態になった時の収入保障、入院手術などの医療保険、ガンや特定の病気になった時に受け取れる一時金で構成されているものがほとんどでした。
私自身はこのような保険が真の意味でものすごく役に立つのは、小さな子供を残して親が死んだときだと考えています。
子供のいる夫婦というのは保険が最も必要とされている層であるという、この考えは保険会社を辞めた今でも変わりません。
大黒柱のお父さんが死亡したとして、残された妻は遺族年金が受け取れますが夫の得ていた収入から比べたら半分以下というケースがほとんどです。
また共働きで妻もフルタイムで稼いでいたケースなど、妻が死亡したときは残された夫が幼い子供を抱えて窮状にさらされるというのはあります。
死亡した妻がフルタイムで稼いでいたとしても、残されたシングルファザーへの金銭的救済制度はシングルマザーと比べて手薄なのです。
報道などでも、そのような家庭のシングルマザーやシングルファザーが困っているという状況を見てきました。
死亡せずとも、要介護状態で働けなくなったときも大変な苦労をすることになるでしょう。
コレを補填するために数千万の死亡保険金や介護年金が支払われるというのは大変役に立つでしょう。
悲しみはありますが、保険に入っていたおかげで金銭的な苦労を強いられずに済むというのは大きいのです。
ここで役に立ってこそ保険加入をしていた意味がありますし、こんな時に役に立たない保険では何のために入っているのかわかりません。
自分で募集した保険が本当に役に立ったケースが無い
これは、もう、私のお客様はみんな運がいいのかもしれません。
喜ばしい事ではありますが、私が募集した生命保険で、死亡保険金が支払われたケースそのものがほとんどありません。
しかも、先ほど例にとった、私自身が生命保険が真の意味でお役に立てると考えられる「小さい子供を持つ世帯」に死亡保険金や介護時の収入保障が支払われたケースは0です。
本当に、そういう子育て世帯に対しては、死亡や介護で1度も役に立ったことはありません。
それ以前に、私が募集したもので介護保障が支払われたケースはそもそも0件です。
介護時の保証がある保険自体の募集はじゃんじゃんしているんですが、実際介護状態になって収入保障を受け取るまでになった人はいません。
私のお客さんはとても強運の人が多いとも取れますし、私の募集の仕方が悪いのかもしれない。
もちろん、私の周囲には、保険が無ければ困窮したであろう遺族に保険を支払い、保険のすばらしさを再認識している生保レディはいます。
ただ、20年以上も勤務している先輩が、似たような状態だったのであまり珍しい事もないと思いますが。
まあ、子育て世代の親が死亡するというケースがそもそも少ないんでしょう。
子育て世代を中心に保険を募集することが多いんですが、そのほとんどが、死んだり介護になったりせず、大病もせず、子供を育て上げています。
まれに入院手術があっても、死亡保険や介護保険が出るような事態にはならない場合が多いんです。
保険の仕事抜きにして周りを見ても、ほぼ無いですね。
話にはちょいちょい聞くけど、私の周りで実際に発生した事例ほぼ無いです。
中学校の同級生のお父さんが、中学卒業を待たず亡くなったという1件が私の人生のみじかに起きた唯一のケースです。
私が役に立ったと心から思った給付は1件
私が10年間の保険会社勤務の中で、あのケースは私が保険契約をいただいて役に立てたと心から思えるものは1件だけあります。
個人情報なのでぼかしますが、とある女性からご契約いただいた月の保険料が5000円ほどの医療保険です。
契約者は独身女性のセイコさんとしましょう。
セイコさんは親も子供も夫もいない独身での60代女性です。
過去に加入していた保険はありましたが、数年前にお金に困って解約していました。
無保険状態で心配とのことでしたが、仕事も定年後の嘱託職員でしたからあまり保険料は出せないと。
そこで、一般的な入院手術を保証する医療保険にガンになったら100万円が受け取れるという特約を付けました。
加入から3年でセイコさんがガンになり、100万円の給付金が支払われました。
セイコさんは貯金もなく、入院前の検査などに費用が掛かったので、実の兄からお金を少し借りて入院したんです。
入院手術の給付金と併せて、全部で130万円ほどの給付がありました。
コレはセイコさんにとっては助かったらしく、大変に感謝され、本当に喜ばれました。
私も、ああ、保険が本来の意味でお役に立てたと思いましたが、本当に心からそう思えたのはこの時だけです。
ちなみに、ガンになったら支払われる一時金もたくさんご加入いただいていますが、このセイコさんに支払われた、たったの1本です。
入院や手術の給付金は役に立っていないのか?
私だって300件近い保険契約を預かる身でしたから、入院や手術の給付金が支払われることはたびたびありました。
入院や手術などは、日常的に請求があります。
そして、給付金を支払えば、お客様からは「保険に入っててよかった」と言われるんです。
この時、ああ、お役に立てな、という気持はあまり湧きません。
なんだかいつも複雑なんです。
全く役に立っていないというわけではないんですよ。
確かに役には立っているのですが、本当に役に立ってると胸を張れない感じなんです。
例えば1週間ほどの入院手術があっても、給付金はトータルでせいぜい10万、20万の世界。
保険料が毎月1万円の保険に加入している人が、3年も保険料を払っていると考えてください。
保険料だけで36万円です。
これ、胸を張ってお客様のお役に立てたと言える人ってどうかしてません?
私は意外と生真面目なんで、どうも複雑でしたね。
私自身も、毎月保険料が1万円ぐらいの保険に加入していて、10年間、一度も請求するようなことは無くここまで来ました。
大変に喜ばしいことながら、コレを全部積み立ててたら…120万円ですね。
一生かけてもそんな医療費かかんないと思います(笑)
まあ、保険というのはそういうモノですから。
コレがおかしいと思う人は保険には加入せず、自分で計画的に積み立てているらしいですよ。
いざという時の医療費として考えられる資金が200万もあればいいんじゃないでしょうか?
もし使わなかったら葬儀代にでもすればいいですし。
でも、お金って積み立てたら何かに使いませんか?
なるかどうかもわからない病気の、使うかどうかもわからない、医療費のためにとっておけます?
保険とは、そういう事ができない人のために存在しているのです。
入社当初の高い志はどこへ…
入社当初、どの生命保険会社も、生命保険の尊さを学ぶ研修をします。
生命保険の営業が、いかに聖業であるか、そういう教育を受けませんでしたか?
私も仕事の尊さに対する教育を繰り返し受けてきましたが、いつも例に上がるのは大きな死亡保険金で救われた遺族や、若くして介護状態になりつつ保険金で金銭的に困ることなく生活している方でした。
でも現実、私の目の前にそんな人は現れない。
これは幸運な事ですが、その逆にゾッとすることがあるんです。
私が募集した生命保険の保険料が毎月納められていますが、それはもう数百万、数千万にも上るのです。
これだけのお金を多くの人から集めて、ほぼ役に立ったことは無い。
生命保険の制度を考えれば当たり前の事なんですよ。
多くの人からお金を集めて集めて、それが数千万集まると、突然それが必要になった人のところに流れていく。
古代からそういうシステムなんです。
このシステムで救われた人がいるのもわかります。
でも、形のないものにたくさんお金を払ってもらって、今まで一度も生命保険が本来の意味で役に立たなかった私の気持ちは複雑です。
これだったら、私、もう他の物を売りますわ。
もっと直接的にお役に立てるモノってあるでしょう?
私は「生命保険のシステムがこうだから、役に立たなくてもお金を集めることに尊さがある」と割り切ることができない人間なんです。
生命保険はどうぞ、それが本当に役に立てると自信を持てる人が、聖業意識をもって募集をしてください。
私は自身のお客様がみんなそこそこ元気でいた事がうれしいはずなのに、それゆえ役に立たなさと向き合いました。
10年売ってこれほど役に立たないのであれば、私はもう降りました。
